氷の視線


新年度がスタートして早くも3ヶ月が経とうとしている。夏休みも目前だ。この時期にさし

かかると、毎年のことではあるが、スタート時のクラスの雰囲気が知らず知らずのうちに

変化してくる。「知らず知らずのうちに」と思ってしまうのはコチラ教える側が油断している

からであって、過去何度もこういうことを経験してきた教師にとっては、「予想通り」の展開

である。クラスのカラーによりその変化のしかたは様々であるが、梅雨の時期とも重なっ

て、たいていは「うっとおしい」方向へと移行していく。


4月の時点でメチャメチャ明るくて活発なクラス・・・コイツは要注意だ。今まで何度だまさ

れたことか。「活発」ということと「うるさい」ということはある意味紙一重。4月の時点では

「うるささ」が「活発さ」と勘違いされやすい。こういうクラスは概して生徒の先生にたいする

愛想がすこぶるよい。大きな声であいさつしてくれるし、コチラの飛ばす冗談もピタリと決

まる。しかしながら、この辺が勘違いのもとだ。ここらで手綱と緩めてしまうと、やがて

生徒の暴走が始まる。


話はチョット飛ぶのだが、先日ある先生から、「私の担当の生徒たちが『今度山根先生を

連れて来て』と言ってるのですが、どうです?」という「お誘い」を受けた。去年教えた生徒

たちだ。このクラスは実によかった。すばらしいクラスだ。しかも私と波長がピッタリ合う。

4月のスタート時から活発で6月の「ワナ」もなく、最後まで思う存分楽しませてもらった

クラス・・・断る理由はどこにもない。「いいっすよ〜♪」 二つ返事でOKだ。「で、何やれば

いいっすか?」・・・「試験範囲はもう済んでますから、お好きなように使ってください。」

・・・「了解!じゃー、トークショウでもやりますか〜」・・・「じゃ〜私も見せていただいていい

です?」・・・「Sure!下品な話も飛び出しますよ、いいっすか?」・・・ということで、今日

久々のトーク炸裂!エギングの話から始まり、キレイなネエチャンの話、職員室での楽しみ

などなど、アチコチに話は飛んだが、どれもきれいに1本の話にまとまり、気分爽快!

こういう雰囲気のトークには「予習」は一切いらない。「アレ話そう、次にコレ話そう」などと

考える方がかえって上手くいかない。すべてアドリブ1本勝負だ。だからこそオモシロイ。

話しているコチラも楽しむ、生徒も笑う、見に来た先生も微笑む。すべてが幸せだ。

最後にはお調子者の生徒がズボンをずらし、パンツいっちょうになって踊ってくれた(笑)。

彼なりの「歓迎の踊り」である。まるで猿だ。でもこういう芸風が私は好きだ。


さて、ここからが本題なのだが、私は元来人前が嫌いだ。ましてや人前で話すことなどは

なるべく避けたい方である。なのにココまでやれるのは決して私の実力ではない。生徒が

いいから、に他ならないのである。ココら辺が勘違いしやすいところで、授業でも何でも

非常に上手くいった時、というのは必ずその後に「反省」が要る。以前ある先生が言われ

ていた。とてもいいクラスを一年担当すると必ず翌年には「自分は教えるのが上手くなっ

た」と勘違いするそうである。この「勘違い」・・・人によっては性質が悪い。やがて「自己

陶酔」へと成長して行くからだ。こうなると「生徒の暴走の始まり」を見逃す。だいたいこの

時期だ。最後には夏休みを経てさらに「磨き」がかかった生徒どもに「もてあそばれる」よ

うになる。そのまま授業崩壊へとまっしぐらだ。


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