Tennessee Waltz (Holly Cole)
「恋人とテネシー・ワルツを踊っていたら、偶然昔の友達に出会った」さて、皆さんなら
この物語の続きの展開をどのように予測されます?おそらく「恋の経験値」によって
様々であろうと思われますが、こんな思わせぶりな書き方をされると、「その後この
友達がこの恋人を奪ってしまった」というような情け容赦のない結末を想像される人
もおられるでしょう。正解でございます!そう!かの有名なテネシー・ワルツとは
「痛恨の歌」なのであります。だからこそこのメロディーはあまりに美しいのです。
しかしこの歌、メロディーのみが一人歩きいたしまして、その歌詞が語られることは
あまりありません。「全世界を制覇した」と言っても言いすぎにはならないくらい
大ヒットいたしましたこの曲は、合衆国テネシー州の州歌であります。日本では古くに
江利チエミが歌ってこれまた大ヒットしましたが、その歌詞には「痛恨の極み」は
歌われておらず、テンポも軽やかな楽しい曲といった印象がございました。
それは当然と言えば当然。だって、当時の日本には敗戦から立ち直る「元気」が
必要でしたからね。そんなときにくらーい悲しい歌詞をつけたらどうなります?
きれいなメロディーだけをいただいて、歌詞はオブラートで何重にも包まれた
和製テネシー・ワルツであったわけです。だから、江利チエミさんには悪いのですが、
彼女の歌うテネシー・ワルツは少なくとも私個人の趣味としましては、ぜんぜーん
キレイではないのです。「悲しさゆえの美しさ」というものがありますよね。この曲を
歌うからには、その辺のところをよーくわかった人が、それなりの歌い方をして
はじめて曲の本当の美しさを味わうことができるというもの。そういう意味では、
ホリー・コールの歌うテネシー・ワルツこそが、正真正銘のテネシー・ワルツである、と
断言しておきましょう。その歌詞に酔いしれながら聞くと、ほんと「悲しいですよー、
切ないですよー、そして、涙がにじんできます。」しかし、だからこそ彼女がしみじみと
語りかけるように、“Beautiful Tennessee Waltz 〜”なのですねー。彼女をサポート
している伴奏もすばらしく、特にハーモニカのソロはあまりに美しすぎます。この曲が
収録されてます彼女のアルバム Don't Smoke In Bed は非常に完成度の高いアルバム
でありまして、2000円出して買っても全然惜しくはない出来であります。
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