Scratch (The Crusaders)


クルセイダーズ・・・懐かしい響きだなー、このグループ。70年代のフュージョン・

シーンをリードした、と言ってもいいくらい流行りました。しかも、単なる流行・廃り

といった言葉で片付けてしまうことが出来ないほど彼らの実力はすばらしい!本来アーテ

ィストの真価が発揮されるアルバムはライヴ盤であることが多く、誰もが一度はこのライ

ヴ盤をリリースするのですが、なかなか「コレ!」という仕上がりになってないのが現状

で、もちろんその辺は各アーティストは十分承知の上でリリースに際してはある程度の

妥協を強いられているのでありましょう。出来のいいライヴ盤であることの必要十分

条件は「そのライヴがよかった」ということであり、その記録であるライヴ盤を聞い

た人が「自分もその場にいたかった〜」と思わせるものでなければなりません。


一言でライヴ盤と言いましても、複数のライヴのいいとこ取りで作成したもの、一つのラ

イヴの中から厳選して作成したもの、と2種類ございますが、ライヴ盤である以上、始ま

りから終わりまでの一連の流れは重要。言ってみれば一つの物語として見事に完結してい

なければやはり不自然でありましょうし、個人的にはその辺がライヴ盤の良し悪しを判定

する材料になっております。そういう意味で「コレはよかったなー」と思えるライヴ盤の

1枚に、クルセイダーズの「スクラッチ」を挙げておきたいと思います。


実際のライヴではもっと曲数も多かったと思われますが、その中から5曲にまとめ、演奏

時間にして約40分のCDに仕上げたものなのですが、決してライヴの流れが途中で分断さ

れてしまったような印象はなく、むしろちょっとしたミニ・ライヴがちゃんと完結したか

のような感覚さえ持つことができるアルバムであります。フュージョンと言えば、主に

電子楽器を使って演奏するジャズに近い音楽なのですが、今聞くとやはり流行モノであっ

たのだなー、という懐かしさを感じてしまうのは致し方ないこと。もっと言えば、古臭さ

を感じてしまうのですが、この「スクラッチ」は今がイイ!当時もかなりジャズ喫茶で

聞き込みましたが、今もそのときの新鮮さを持ちつづけているライヴですなー。1曲目の

スクラッチはスタートにふさわしいファンキーなノリの曲で、ジョー・サンプルのキー

ボード、スティックス・フーパーのドラムスが客を一気に彼らのライヴに乗せてしまいま

す。この辺の乗せ方は全く嫌味がなく自然でいいな〜。ひとりでに体がリズムを刻みま

す。3曲目のハード・タイムズではウィルトン・フェルダーのテナー・サックスが聞かせ

てくれ、4曲目のソー・ファーラウェイを経て、最後はメンバー紹介をしながらしっとり

とウェイ・バック・ホームで幕を閉じる。この辺の流れがライヴとしてすばらしいのであ

ります。会場に居合わせた気分でライヴを楽しめるアルバム、そうめったにお目にかかれ

るチャンスはございません。夜の仕事である私などはライヴの現場に居合わせるというよ

うなことはほぼ皆無。そんな私にとって極めて貴重なライヴ盤。そろそろ秋の虫の声が

聞こえてくる8月の夜、こういうライヴ盤と付き合うひと時はシアワセ〜♪