Passione (Barney Wilen Quintet)


ジャズの演奏形態には、1人で演奏するソロから始まり、人数が1人増えるごとにデュ

エット、トリオ、カルテット、クィンテットくらいまでが通常よくみかけるパターンで

ありますが、当然楽器が増えるにつれてヘタに演奏すれば「耳障り、うるさい」といっ

た印象がついてまいります。「うるさい」のが苦手な日本人にとっては5人でパラパラ・

ブーブー・ドンドンやるクィンテットという形式、あまり一般受けいたしません。日本

人にとっての限度はカルテットあたりにあるようで、管楽器が入った演奏形態ではこの

4人ものが最も売れてますねー。じゃー、5人編成のクィンテットは本当にうるさいの

か?もちろんモノによるでしょうが、ただの「寄せ集め」はホントうるさい。しかし、

ブエノ・ヴィスタ・ソシアル・クラブなどのような南国系はやはり人数多いほうがなぜ

か「心地よく」聞こえますし、故マイルス・デイヴィス率いるクィンテットなんてクー

ルそのもの。だから、やはりやり方とシチュエーション次第で、ぜんぜーんうるさくな

い演奏というものも確かにあるし、こういう演奏ができるグループこそがホンモノの実

力と良質な感性を兼ね備えた人たち、ということになろうかと思われます。で、この暑

苦しい真夏の真昼間に聞いても全くうるさくない、いやむしろ涼しささえ感じられる

アルバム、それがコレ、バルネ・ウィラン・クィンテットの「パッショーネ」。毎年

真夏がやってくるとCDの棚の中から引っぱり出してよく聞きますなー。アルバム・

ジャケットにも写真があるように、このアルバム、「海」を意識した音を聞かせてく

れます。山陰などの外海に面したひろーい砂浜にカモメが舞い飛ぶ様、なんて想像し

ながら耳をかたむけるとホーント心地よい。コレ、秋口くらいまで使えます。バルネ・

ウィランの奏でるサックスの音色は実に滑らか、嫌味なところがぜんぜんなく、何の

障害もなしにすんなり耳と心のなかに入って来ますなー。またこのアルバムのなかで

かなーりフィーチャーされてますエンリコ・ラバのトランペットもじつーにセンス

いい!海とトランペット、相性いいですよね。アラン・ジャン・マリーのピアノも控

えめでとてもキレイ。11曲収録されてますが、全編にわたって捨てたい曲はありま

せんし、海のお好きな人にはぜひ一度リラックスしながら聞いていただきたい1枚で

あります。なかでも私の耳にこびりついて離れない曲は、マイ・シップ、パッショー

ネ、エスターテ、ベラ・チャオ、波止場にたたずみ、以上5曲。5人がお互いの邪魔

をすることなく、みごとに5つの楽器が溶け合った演奏、そうめったに聞けるもので

はございません。




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