3/23 春ギスの攻略



春という季節、とくに早春の時期は、「寒→暖」の時期。肌で感じる気温が人を
勘違いさせやすいのだが、海の中はどんなにポカポカ陽気の日であっても、まだ
冷凍庫状態(もちろんキスにとってだけど)。中学で「慣性の法則」というのを
習った記憶はみなさんおありであろうかと思いますが、たとえば1月は海水温が
「暖→寒」と移行していく最終月、で、3月はその逆。暖水系の魚が行動しやす
いのはどっち?魚の行動にこの慣性の法則みたいなものをあてはめて考えてやる
とおわかりとは思いますが、3月は「静→動」が始動する時期・・・つまり魚は
「静」の状態をそのまま保ちつづけようとする傾向にあり、仮に1月とまったく
同じ水温であってもその釣れ具合は1月の方がはるかに高活性であり、その時期
に爆釣(とまではいかなくともそこそこイイ思い)をされた方は勘違いを起こし
やすく、1月のようなリズムで早春のキスに挑むと玉砕するケースが多い。さら
に、魚(キス)が「静」の状態を保ちつづけようとしているからといって、置き
竿にすると食ってくるのか?・・・残念ながらキスの習性としてその可能性は低
い。低活性であっても仕掛けを動かさないとやはりキスは食ってこない。ここが
釣り方として非常に矛盾するところ。置き竿に食ってくるケースもあるが、その
場合食ってくるタイミングをじっくりと観察すれば、ほとんどが引いてきた仕掛
けをストップさせて竿を置いた瞬間か、あるいは竿を置いてエサが潮になじんだ
瞬間に反射的に食ってくる。エギング経験するとこの辺の性質は非常にイカと
良く似ていることが実感できる。というか、魚ってたぶんみなこういう食い方を
するのでは?エサがフォールしていくタイミング、ないしは動きが終わって
フンワリとなった瞬間こそが、魚にとって「捕食のチャンス」だということ。



で、3月の活性だが、先に述べた通り、かなり低い。エサを吸い込む力がない
ので、当たったら上手に食わせるタイミングを作ってやらないとアタリがはじか
れる。というか、当たったらでは遅すぎるケースが大部分で、アタル前からアタ
ルことを予測していないと零コンマ何秒か人間の反応が負けてしまい、掛ける
ことが出来ない。こういう失敗を毎年のように幾度となく繰り返してきて、なん
となくではあるが、得たもの・・・

それは、何より、「常にキスがエサを追尾してきている」という意識・集中力
を持続させること。集中力を持続させるといっても、長時間であるからなかなか
完ぺきにできている人は少ない。ワタクシは集中力が切れそうだと思った瞬間に
はラインを緩めながら竿を置くようにしている。疲れを癒すという意味合いが
大きいのだが、キスが捕食するタイミングを与えてやるという意図もある。先ほ
どの話になるが、そういう瞬間をキスの方はよく見ている。竿を置いた瞬間は
集中力を切らしてはいけない瞬間だ。逆に置いた竿を再び始動する瞬間にもアタ
ルことが多く、この場合、「ここが捕食のタイミングだ」という意識がないと、
どうしても竿を持ち上げることでラインが張ってしまい、弾かれる。置いていた
竿を動かす瞬間は、魚にとってエサが逃げようとする瞬間・・・コレには低活性
のキスも慌てて反射的に飛びつくようだ。

引き方は、「ラインを張らず緩めず引く」・・・これが最も掛け損ねのない
引き方。慣れてないとなかなか難しいが、エギングのノリで行けばまず掛け
損ねることはない。身体の重心を前方に移動させながらラインを巻くとうまく
いく。竿で引く場合は、竿の重心辺りにかるく手を添えて、竿を握るのでは
なく、竿を一本の指で支えるみたいな感覚で、腰の回転を利用して引く。
「一本の指で・・・」というのはちょっと大げさな表現だが、竿を持つのでは
なく、リールを下から支えるように軽く持つという感覚で。

送り込み・・・よくキスのアタリへの対処法にコレをやることがあるが、春
の低活性のキスに向いている対処法に一見思えるのだが、コイツが実はまず
い。体力がないので、送り込んでやるとただ仕掛けがたわむだけで、キスは
エサを咥えたマンマになることが多い。つまり、エサは咥えているのだけ
ど、ハリ掛かりしていないわけで、それをそのまま回収すると、リールを
巻き始めた瞬間に外れるか、もしくは、水揚げ寸前でおさらばになる。一番
脱力感に襲われる瞬間だ。よって、いかに春ギスといえども、「掛ける」
ということは大切。アタリに対して、送り込みすぎず、張りすぎず、ソフト
にブレーキングしてやり、確実にフッキングさせておく方が、そのまま連
を狙うにしても、そく回収するにしても有利に作用する。

さて、春ギスのアタリはほぼワンキャスト・ワンフィッシュだと考えた方が
いい。アタリだけを楽しむのならまだしも、夕飯の食材をある程度確保した
いのならば、欲張らずに一匹一匹確実に取り込んだ方が結果的には釣果は伸
びる。よって早春のキス釣りは1対1の勝負という色合いが濃くて、はまる
と結構面白い。一日やって4〜5匹という釣果であっても「また行きたく」
なるのだ。つまり、「今日あそこで掛け損ねたパターンを明日はかならず獲
ってみせようぞ!」みたいな、復習劇ですなっ。こだわりの強い人ほど嵌っ
てしまいます。激渋のキスを何匹、どうやって、攻略したか?がその人の
勲章なのです。



ポイントですが、深みを上手く見つけられれば、そこには良型がかなりまとま
った数でたまっていることが多い。だいたい瀬戸内では深みがかなり遠くにあ
るので、遠投に興味のある方は練習を兼ねて深み探しというスタンスで実績場
の今まで攻めたことのない沖のポイントを攻略してみるのもオモシロイです。



ポイントは必ずしも遠投とは限りません。漁港の中とか、ドン深になっている
波止の付け根といったところも、春ギスが避難するには格好の地形になってい
ることが多く、そういう場所を見つけると、この低活性の時期にかなりのラッ
シュになるという場合もありです。





何投かすると、キスの居場所が特定できてくるのは盛期と同じ。見つけたら、
その場所をなるべく長持ちさせるために、「遠投してポイントまで素早く仕掛
けを引いてきて、ポイントに入ったらメチャメチャ微速で
引いて」やります。決してラインを張りすぎてはいけません。竿をぎゅっと
握り締めてはいけません。張らず緩めずを意識しながらゆっくりとアタリを
予測して釣る・・・こういう意識さえ保てればまず獲れます。

これからの時期、キスの活性は当然上向きになるのですが、あくまで「まだ
海の中は冬」なのです。釣り人の意識もそれにあわせて冬モードでリズムを
とるように心がけなければならない時期が、あと1ヶ月くらいは続く模様。

あっ、それと、今日の話はあくまで「PEラインを道糸に」した場合の話。
ちなみにナイロンの1.5号くらいを道糸にしてやれば、アタリを感じる
チャンスは半減いたしますが、釣果じたいはほぼ倍増します。アタリなんて
どうでもいいから、とにかくたくさん釣らせろ!という向きにはいいようで
す。ワタクシも絶対に獲りたい時はナイロンを選択します。